人形ねぷた制作の最後の作業となるのが、「色付け」の作業である。
ねぷたに用いる色の材料は、主に染料と顔料であったが、最近では、ポスター
カラーなども用いられるようになった。染料や顔料の利点は、光の透過性が
高く、色が鮮やかに光り輝くことにあるが、雨などの水分に非常に弱いという
欠点がある。その欠点を補うために、現在では、水性ペンキやアクリル系塗料
を配合するなど、さまざまな工夫がなされる様になった。
それでは、前回お約束した、「ぼかし」の技を紹介することにしよう。
ぼかしには3つの技法がある。
それは、「水ぼかし」、「ハケぼかし」「三段ぼかし」とそれぞれ呼ばれている。
順に、簡単に説明しよう。
「水ぼかし」は、ぼかしたい部分にあらかじめ水を塗り、その上に色を重ねる
ことで色のグラデーションを作る。けれども、よほど慣れていないとうまく
できない難しい技法である。
「ハケぼかし」は、ハケの両端にそれぞれ色と水を付けて、ハケの中で色の
グラデーションを作り、それを塗っていく技法である。一度やり方を覚えれば誰に
でもできるが、ハケの幅以上にぼかすことはできず、限られた部分でしか用いる
ことができない。
この両者の欠点を補い、誰にでもどんなところにでも「ぼかし」を描ける技法が、
「三段ぼかし」である。
これは、色と水の他に、それらを混ぜ合わせて中間色を作り、それぞれにハケを
用意する。これらをぼかしたい部分に、水から順に塗り重ねていくのである。
この技法を用いれば、誰にでも、もちろん子どもたちでも色付けに参加すること
ができる。この作業が、終了すると、いよいよ祭りが始まる。
ねぷた小屋中がその期待に胸膨らませ、皆、浮き足立ってしまうのもこの「色付け」
の作業のころである。思わぬ怪我が発生しないよう、十分な注意が払われなければ
ならないことを付け加えておこう。
次回は、人形ねぷた制作にかかる「費用」について述べていこうと思う。
参考文献 『重要無形民俗文化財 弘前ねぷた ―歴史とその制作―』