第16回 「おわりに」―守りそして受け継ぎたい―

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人形ねぷたの技法と魅力を伝えるために、ペンを執ったこの連載も今回が
最終回となる。
最後に私が述べたいと思うのは、ねぷた祭りの文化を引き継ぐ次世代の
子どもたちや若者たちのことだ。

私たちの団体で、今、最も頭をひねらしていることは、運行時はもちろ
んのこと制作時にも、いかに彼らの出番を増やすかということだ。
それは彼らにねぷたを作る喜びも伝えていきたいからだ。全ての子ども
たちや若者たちがその楽しさを感じ取ってくれるわけではないだろう。
ねぷたには、ねぷたを引く喜びや、お囃子に参加する喜びだってあるだ
ろう。どれを選ぶかは彼ら次第だし、ねぷた祭り以外のことに興味を抱く
子もいるだろう。けれども、自分の居場所として、ねぷたを作る
「ねぷた小屋」を選んでくれた子どもたちに何がしてやれるのか。
私はそれを一番に考えている。

現在、若者たちのねぷた離れが進んでいると言われる。これはねぷたに
限ったことではなく、様々な伝統文化においても叫ばれていることである。
このような状況は、子どもや若者を取り巻く環境の変化が第一の理由では
あろうが、だからといって、ただ手をこまねいているだけでは、伝統文化
は後継者を失い、衰滅してしまう。
社会の変化にねぷた祭りも呼応して進化していかなければならない。
その方向性を具体的に考えなければならないところにねぷた祭りはきてい
るのではないだろうかと思う。

私は、ねぷた祭りは、津軽が誇る「資源」であると考えている。
それは目に見える形での観光的な資源という側面のみではなく、地域社会
において多くの意義役割をもった文化的な資源でもある。ただ闇雲に、
観光的な側面ばかりに注目し、この文化をすり減らすような活用がされては
ならないと思う。地域社会の教育の場としての機能をもった、子どもたちや
若者たちの居場所としてのねぷた小屋を、私たちは目指していかねばならない。
このような文化的な側面を再び機能させることを、「ねぷた」は、今、社会
から求められているのではないだろうか。 -完-

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中川俊一 執筆コラム

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