第8回 「紙貼り」―人形ねぷたを象徴する作業―

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「紙貼り」は、組み上がった骨組みに一枚ずつ厚手の和紙を貼ってゆく
作業である。昔は、奉書紙をでんぷん糊で貼り付けていたけれども、
今では、木工用のボンドで化学繊維入りの和紙を貼り付けている。
紙の貼り方の手法はそれぞれの地域や団体によって異なっている。
弘前では、骨組の方にボンドをつけていくが、五所川原では、和紙の方に
ボンドをつける。また青森では、主にカッターや剃刀を用いて紙を切る。
このような多様な紙貼りの手法は、それぞれに試行錯誤が繰り返されて
きた結果であろう。

この「紙貼り」という作業は、人形ねぷたの制作作業の中で、一番手間と
時間がかかるもので、その作業量は、全体の作業量の過半数を占める。
つまり、人形ねぷたの作業は、その半分以上が紙貼りということだ。
そして、「紙貼り」には、もう一つ特徴がある。それは作業がさほど
難しくないということだ。
一度やり方を覚えれば、誰でも作業に参加できるのだ。
言い換えれば、人形ねぷた制作の作業の半分以上は、特別な技術を
必要とせず、誰でも参加できるということだ。

実は、人形ねぷたの制作は、「紙貼り」のように子どもたちでも
参加できる簡単な作業から、「骨組み」のように習得に何年もかかる
難しい作業まで、作業の難易度の幅を持っているのである。
その幅は、そのまま作業に参加できる人の幅となっている。
人形ねぷたは、子どもから大人まで、皆で作ることができるねぷた
なのである。

ちなみに、私が、初めて人形ねぷたの制作に参加したのも紙貼りの作業で、
小学校5年生のころだった。たったの一枚しか貼れなかったけれども、
作業に参加できたことがとても嬉しかった。
その嬉しさの余り、私は自分が貼った和紙の裏に名前を書き、祭りが
終わってから、その和紙を切り取り、家に持って帰った。
作業に参加する一人一人の小さな喜びが集まって、ねぷたは作られるの
だと私は思う。
次回は、台座部分の絵の制作について述べてゆく。

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中川俊一 執筆コラム

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