「ねぷたの今を考える」最終回

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「まつりの意義役割」

最終回となる今回は、調査の集計データから離れて、まつりが現在求められている役割について私見を述べたいと思う。

まつりは日常の生活とは離れた「非日常」の時間・空間であり、昔の人はこれを楽しみに日常生活では質素倹約に励んだ。

そして、「非日常」であるまつりの時だけは、普段できないようなぜいたくをした。

他の地方のまつりでは、そこに「神」との関わりが存在することが多い。

一方、ねぷたまつりは、「眠り流し」という古い習慣にその源流があると言われる。

「眠り」というけがれをはらい、心身の健康を願う習慣であり、日本各地に起源を同じくするまつりが存在している。

この習慣は、もともと宗教的な神性とのつながりが希薄であり、現在でも神社仏閣とねぷたは所縁がない。

しかし、ねぷたまつりもやはり、その担い手たちにとっては、特別な時間であることに変わりはない。

そして、現代においては、その特別な時間の役割が注目されている。

地域の内部での役割としては、まず、人のつながりをつくること。

「ねぷた」を共有することにより、既存の関係を強めることもできるし、新たな人間関係を築くこともできる。

そして、人のつながりの中に子どもたちが加われば、社会教育の受け皿としても機能する。

地域の伝統文化を実体験してもらうことで、地域への愛着心を育むことも可能である。

一昔前であれば、こんな当然のことは着目されなかったであろう。

しかし、町内会加入率が低下し、地域社会がその力を弱めてきている現代では、まつりが地域内で果たすべき役割は大きい。

また、地域の外に向けては、観光資源としての機能を持っている。

それは人口減少に向かう今の時代を考慮すれば、地域外からの移入を促進し、交流人口の創出にもつながる。

「地域力」という言葉がある。

地域における課題の解決を行政のみに委ねるのではなく、地域住民が主体的に考え参画し解決しようとする力を示す。

ねぷたまつりは、300年以上の歴史をもつ。その歴代の担い手たちは、幾多の困難を乗り越え、今日までねぷたをこの地域に継承させてきた。

それは、まさに現在でいうところの「地域力」によって、成しえたものであろう。

「ねぷたの伝統は、担い手の心意気だ。」これは、あるねぷた関係者から伺った言葉である。

はるか昔からこの地域に受け継がれてきた、その伝統を次世代に渡すため、今の課題に、今の担い手がしっかりと向き合う必要がある。

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中川俊一 執筆コラム

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