「ねぷた」のみならず、あらゆるものごとに言えることですが、「安全」は最も重要です。
「安全」は、ものごとの一番下の土台です。土台が無ければその上に何も成立しません。
しかし、「危険」はその可能性を「ゼロ」にすることはできません。
それは、人間がミスをする確率を「ゼロ」にすることができないからです。
では、「ゼロ」にできない「危険」をどう管理=マネジメントするか。
我が団体の考えです。
考えのモデルにしたいのは、船の機械工学です。
船舶は、陸地を離れ外洋を航海します。
容易に陸地からの支援は受けられません。
外洋での機械の故障は、致命的な事態です。
船舶の航海に欠かせない、重要な機械の一つが方角を示すコンパスです。
コンパスには、地球の磁力を感知する方位磁針と、
それを利用しない機械式のジャイロコンパスなどがあります。
(私が知っているのは20年前の知識なので、現状とは乖離があるでしょうが。)
ある船では、ジャイロコンパスと方位磁針を両方とも複数台ずつ、搭載していました。
これは、一台が故障してもすぐ予備がフォローできるようにするためです。
一台が故障する確率が1万分の1であるとき、
同じ故障確率の機械が同時に故障する確率は、1万分の1の2乗になります。
つまり、2台あれば、1億分の1となります。
3台あれば、一兆分の一です。
そして、方式の異なる機械を積んでいれば、さらに「リスク」は減らせます。
この原理が、最も単純ですが最も確実な「リスク」を減らす方法だと考えます。
これを、故障率1万分の1の高度なハイテクで考えるのではなく、
10分の1くらいでミスをする人間で考える。
確率が違うだけで、原理は一緒です。
認知→判断→行動のプロセスを一人が行うのではなく、複数人で同時に行う。
そうすれば、一人増える毎に、ミスの確立が一桁ずつ減っていくはずです。
そのためには、認知→判断→行動のプロセスを行う人間を、
育成して、配置していく必要があります。
つまり、「自ら判断」ができる「考える人間」を育成し登用していかなければならない。
それを、「船頭多くして船山に登る」にしないためには、
舵を取る=ハンドル、前後進=アクセル、停止=ブレーキといった役割を、
どのように意識共有して、分担するのかが重要です。
人数的には、ねぷた一台につき、ハンドルは1人(先導=扇子持ち)、
アクセルとブレーキが5人(前かじ棒)、
ブレーキをそこにいる全員が実行できるようにしたいと考えています。
さらに、ハンドル=先導、アクセルブレーキ=前かじ棒、ブレーキ=全員、という全てを把握して、
誰かの判断ミスを瞬時にリセットできる(つまり、事前にリスクを予知できる)人員を
可能な限り増やしていきたいと考えています。
我々は、ねぷた運行参加者全員が「考える人間」という団体を目指します。
そのために、これまでの42年の蓄積された経験を全て活かしたいと考えています。
初代からの、「機械昇降・機械回転を用いない」という決断を貫いた上で、
なおかつ、さらなる「安全」を目指したい。
ねぷたを子どもたちに継承するために、
現代の担い手である大人全員が「考える」ことを目指します。
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■yahooニュース(2015年3月20日(金) 14時20分掲載)
(http://news.yahoo.co.jp/pickup/6153633)