前回の前灯籠に引き続き、今日は扇ねぷた様式の前ねぷたの取組を紹介します。《前回から読む》
前灯籠を卒業した子どもたちは写真の扇前ねぷたを担当します。(写真は待機場所での待機中)
さて、写真の前ねぷたのカジ棒ですが複雑に入り組んでいます。
簡単に言えば、内側に大人用の高さのあるカジ棒、その外側に子ども用の一段低いカジ棒と、
二重構造になっています。
運行中は、前のカジ棒のセンターに「守護神」と呼ばれるブレーキ役の大人が入り、
両サイドのカジ棒に、コントロール役の大人が一人づつ入ります。
アクセル役が子どもたちというわけです。
車輪部分から遠い、外側に子ども用のカジ棒がついているので、
子どもが万が一転んでも、ブレーキ役の大人がねぷたを停止させます。
車輪も径の大きいものを使うと、億が一にもひかれてはいけないので、
直径150㎜ほどの「キャスター」を8個使用して、低床にしてあります。
設備面での取り組みと同時にメンタル面も考えています。
この年頃の子どもたちは、集中力が切れて「飽き」がくると、それが一番の危険因子となります。
そもそも、それを配慮して、子どもたち用の前ねぷたを運行隊列に加えているのです。
ねぷたを引くロープを取り付けて、子どもたちに引いてもらうという手段もあるのですが、「飽き」防止のため用いていません。
そして、究極のメンタル対策として行っているのが、
子どもたちによる前ねぷた制作です。
子どもたちは、自らで制作した前ねぷたを運行しているのです。
制作での取組は、前回も紹介しましたが、
台座部分の全ての絵の色付けを子どもたちが行っています。
それに加えて、この前ねぷたは子どもたちの一番上のお兄さん(去年は中学三年生)が、
鏡絵、見送り絵、袖絵ほか全ての絵を担当しています。
《参考記事》
いわゆる《ねぷたノリ》が生んだ奇跡
つまり、子どもたちの手による、子どもたちのためのねぷたというわけです。
この前ねぷたに関しても、安全対策の再議論をしています。
キャスター使用での低床に加えて、そこにガードを取り付ける予定です。
また、引き手の子どもたちに配慮して、軽量化しているんですが、
これがどうも「余計なお世話」らしく、
子どもたちのパワーですぐに加速してしまうのです。
何かしら急加速しない仕掛けを検討中です。
この前ねぷたを卒業すると、子どもたちは大人に混じって、
お囃子や他のねぷたの引き手などを担当します。
そして、ねぷた団体を、ねぶた文化を担う手になっていくのです。