浅草ねぷたの奇跡 第3回 浅草由来の題材

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さて、今回は浅草ねぷたで運行されている人形ねぷたの題材についてお教えしましょう。

 

左の写真は、浅草の伝統芸能である「金龍の舞」を題材にした人形ねぷたです。

金龍の舞は、十数人で金龍の身体からでた棒を操り、

蓮華珠(観音様の象徴)を追いかけて舞う姿を表現する伝統芸能です。

 

2012年度に制作しました。

浅草を代表する伝統芸能を人形ねぷたで制作させて頂くということで、

光栄であるとともに重責を担ったという緊張感をもって制作に臨みました。

 

ところで、人形ねぷたに設計図がないということをご存知でしょうか?

多くの場合、イメージ画はありますが、細かい寸法が決められた設計図はありません。

これは、発光体という特性を人形ねぷたがもっていることから、

一般的な立体造形とは異なるデフォルメ(誇張表現)が用いられるためです。

どのようなデフォルメをどれくらい用いるかが、人形ねぷた制作者の個性の一つでもあります。

 

しかし、金龍の舞は実在する伝統芸能であり、

金龍の頭部と尻尾は彫刻された立体造形として存在しています。(胴体部分は布製で形が変幻自在)

実在する立体造形を、人形ねぷたで再現するということで、

まずは写真資料を大量に集めて、細かいサイズを推測し、

設計図に近いものを制作するところから始めました。

 

実在するものをコピーするというのは、実は結構大変なんです。

メジャーとものさしで細かい寸法を測りながら、

時には分度器もつかって角度も調整しつつ、骨組みを進めていきました。

これ結構時間がかかるんです(#^.^#)

 

また、金龍の頭部が下で、尻尾が上に伸びる構図も、

時間をかけてじっくり考え抜いた自信の構図です。

尻尾の一番高いところが4600㎜ほどあるので、からくりがついています。

 

さて、もう一つのねぷたは、歌舞伎の題目である「お祭り」を題材にした人形ねぷたです。

2013年に制作されました。

「お祭り」という演目は、故中村勘三郎さんが得意とした演目です。

勘三郎さんを偲ぶという意義も頂いて、人形ねぷたを制作をしました。

(特定の個人をねぷたの題材にするということで、勘三郎さんの関係各位に承諾を頂いて制作しました。)

 

ねぷたでは、歴史上の偉人を題材に制作することが良くあります。

しかしその多くの場合、写真資料のない戦国武将や三国志の武将などです。

顔の容姿は、組師の想像や創作で制作されていきます。

 

似顔絵のように、人形ねぷたを制作するというのは初めての経験でした。

写真資料とともに動画資料も収集して、イメージを頭に叩き込みました。

パソコンのデスクトップの画像にも、勘三郎さんの写真を使ったりしました。

 

そして、もう一つ課題がありました。

それは、顔の部分に、人形ねぷた特有の墨を入れることが出来ないということでした。

なぜならば、歌舞伎はその役柄によって、顔の化粧が決まっています。

ねぷた特有の墨を入れてしまうと化粧の仕方が違うということになってしまうと考えました。

発光体の特性として、「形状が認識しずらい」ということがあります。

それを軽減するためにも、墨を入れるのです。

 

しかし、今回ばかりは顔に墨を入れられない。

そこで、墨を入れずとも、顔の形状を認識しやすいように

「流線組み」という組み方を多用しました。

(「流線組み」はうちの団体で勝手につけたネーミングです。

針金を流線的にねじれや歪みをコントロールしながら用います。)

 

さて、そんな苦労の成果は如何に?

浅草の方の評価は、、、

「勘三郎さんの若いころとか、息子さんの方に似てるね。」でした。

なんとか及第点を頂けたというところでしょうか。

 

このように、浅草ねぷたでは、

弘前では制作しないお題を頂けることが多く、貴重な経験値を得られます。

またこのような事業で、ご当地のお題をねぷたの題材にするという点が、

文化交流への寄与を鑑みれば、大事なことではないかと思ったりします。

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中川俊一 執筆コラム

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