第一回 まつり参加団体増加を考える。
ねぷたまつりは資料に残るだけでも300年以上続いている、この地を代表するこの地に深く根ざした文化である。
弘前大学では、このねぷた・ねぶたを対象とした調査を、一九八六年(人文学部)に行っている。
そしてその比較調査が、まつり関係団体のご協力によって、ここ五年間で、弘前を中心に複数回実施された。
この連載ではその調査分析結果に加え、弘前市との連携調査研究事業によって実施された「ねぷた勉強会」での討論も踏まえて、
弘前ねぷたまつりに関する研究成果をご紹介していく。
その第一回となる今回は、まつり参加団体の増加について紹介する。
弘前ねぷたまつりに参加する団体は、一九八六年の調査時には六一団体であったが、
その後緩やかに増加し、現在では八〇団体をゆうに超えている。
では、団体が増加したから、まつりは活性化していると単純に考えてもよいものだろうか?
調査結果を集計してみると意外な事実が明らかになった。次を見て頂きたい。
一団体あたりの平均参加者数:224.51人(1984年)⇒132.71人(2009年)
祭り全体の参加者数:13695.11人(1984年)⇒11147.64人(2009年)
一団体当たりの平均参加者数が大幅に減少している。団体数が増えたのだから、参加者が分散するのは当然だ。
しかし、問題はまつり参加者の人数が二割も減少しているという事実である。
近年、祭り参加者動員に苦労する団体の声が多く聞こえていたが、それが数字の上でも明らかになった。
要因として、考えられるのは単純な人口減少というよりは、世代別人口のバランスの変化であろう。
加えて昨今の、地域活動への参加者減少という全国的な傾向からみても、地域住民のまつりへの関心意欲の減退なども考えられるだろうか。
いずれにせよ、まつり参加者は明らかに減少している。
これはまつりの衰退を示すものであろうか。私はそうではないと考えている。
その根拠が次のデータである。再び表を見て頂きたい。
準備制作から参加する人の団体平均人数:12.64人(1984年)⇒13.79人(2009年)
準備制作に参加する人のまつり全体人数:771.10人(1984年)⇒1158.36人(2009年)
ねぷたまつりはその準備制作に多くの手間を要するまつりである。
これは毎年まつりのシンボルであるねぷたを新たに制作するのであるから、他の地域のまつりと比べても格段に準備期間が長いのは当然のことである。
その準備制作時期から参加し、ねぷたの準備制作を行う方々の人数を見てみると、一団体あたりの平均人数が、一九八六年よりもわずかに増加している。
平均人数が微増ということは、参加団体数が増加しているのであるから、まつり全体では、準備制作に関わる方々が1.5倍も増加という結果が得られた。
この準備制作から参加する方々は、おそらくねぷたをこよなく愛する、つまりは地域の伝統文化を支える貴重な人材である。
このような方々が増えている。素晴らしいことである。
ここまで考慮すれば、参加者減少という事実は、逆に一団体あたりがコンパクトになり、運営がしやすくなったのでは、つまりねぷたの将来は明るいのではと推測された。
しかし、団体運営における苦労を調査した結果は必ずしもそうではなかった。
現実は、まつりが抱えた多くの問題に、まつり参加団体主要人員がなんとか耐えているというものであった。
詳細は次回。