都会から人をとり戻すことができるか
祭りの地域内での意義役割を考えてきたが、外にも目を向けてみたい。
地域外の人からすれば、祭りは観光旅行の目的対象の一つである。
つまり、祭りは観光資源としての側面をもっている。
まずは、統計資料で数字を整理してみよう。
大きな都市で行われているねふたでは、毎年観光客の数が算出され公表されている。
青森県観光国際戦略局による「平成二四年観光入込客統計」を調べてみると、
「青森ねぶた祭」が305万人、「弘前ねぷたまつり」が162万人、「五所川原立佞武多」が133万人と算出されている。
この数字は、他の地域の祭りやイベントと比べても全く遜色ない。
この三都市のねふたの合計だけで入込客数600万人ほど、これ以外のねふたも合わせれば、数字はさらに大きくなる。
この数字だけ見ても、ねふたという祭りが地域にもたらす経済的効果は非常に大きい。
(客数に県外客の割合と一人当たりの消費額を想像して乗じてみてほしい。)
経済効果という数字の話だけでは面白くないので、ねふたの現場で聞いた実例を一つ紹介したい。
昨今、観光の現場では、「リピーター客の獲得」という目標をよく耳にする。
一度だけ観光に来てもらうのではなく、何度も繰り返し訪れてもらうための工夫が求められているということだ。
私はそのモデルケースのようなこんな実例を幾度も聞いたことがある。
県外から毎年ねふたに参加する人がいるという。
津軽を第二のふるさとであると考えてくれている。だから、毎年ねふたの時期に里帰りをするのだ。
そんな人の中には、ねふたへの参加を通して、結婚や就職という出会いに恵まれ、津軽に移住した方もいるという。
実際に移住された方に話を聞くことができた。
東京に暮らしていた方だ。本人は東京で生まれ育ったが、両親は東京出身でなかったこともあり、地元の祭りに参加したことがなかったそうだ。
それもあってか、東京という場所を自分のふるさとであるとは認識していなかったという。
そして、縁あってねふたに誘われ、祭りに参加してみたら、毎年来たいと思った。
何年か参加しているうちに、ねふたの人間関係にもとけこみ、そこで出会いがありIターンの形で24才の時に移住したそうである。
現在、進学や就職を理由に、地方から都心部への若者流出という現象が危惧されているが、その逆の流れを作る一つのきっかけにねふたがなったのである。
このような事例は決して多くはないだろう。しかし、先に挙げた「リピーター客の獲得」ということを考えた時、この事例から得られることは意味深い。
観光資源としてのねふたには、経済効果の大きさはもちろんのこと、
移住促進や交流人口の獲得の機会としても大きな期待をもてるということを指摘したい。