文化の継承に向けた現在のステップ―その1
ここまで、「ねふた」を祭りとして、灯籠そして技法として、その「豊かさ」を考えてきた。
述べてきたのは、➀発散性、②地域の絆を生むシステム、③経済効果と移住促進、そして④灯籠の美しさ、である。
これらは、すべて「ねふた」のこれまでの長い歴史が作り上げてきた「豊かさ」である。
では、これからの「豊かさ」を創出していくために必要となること、つまり現代を生きる私たちができることは何だろうか。
今求められる次のステップを、私なりに考え整理し、この原稿の結としたい。
➀後継者の育成
ねふたの技法を継承していく若い世代の育成をどのように考えるか。
津軽地方全域でみてみても、専従的な「職業」としてねふたの制作者は数えるほどしかいない。
ねふたを制作する機会はやはり夏季だけに限られてしまい、専従的な職業として通年で収入を得るのは容易ではないことも一因であろう。
もっとねふたの技法を様々なことに応用することができないだろうか。
行政や企業の支援体制を充実させることはできないだろうか。
専従的職業とまではいかなくても、兼業を支援する方法はないだろうか。
地域一丸となった、この技を継承していくための体制の構築が待たれる。
②ねふた祭り参加団体の収入の確保
①とも関連することだが、祭りに参加している、「ねふた団体」と呼ばれる組織の自立的な運営を確立する必要があると思う。
このような団体の収入源は、会員からの会費収入や、行政からの支援、町内会などの母体となる組織からの支援が主なものである。
そのいずれも、個人カンパなり税金なり地域内からの持ち出しと言える。
これのみでは自立的な運営にも限界がある。
先にも述べたようにねふたには、地域外からの観光客が多数訪れている。
この方々の観光消費が直接ねふた団体の収入となる方法はないだろうか。
こんな話を紹介したい。
京都で行われた祭りをテーマにした研究会に参加した際の話である。
京都の祇園祭の研究をされている方に、ねふた団体の主な収入源を聞かれ、前述したように答えると、行政からの支援があることに驚かれた。
(宗教的な神事に行政が支援するのは難しいであろうなどとも推測したが、それはさておき、)
では、京都祇園祭においてどのような収入源があるのかと質問を返した。
実に驚きの回答を頂いた。
祇園祭では各団体で「粽(ちまき)」と呼ばれるものを販売し収入を得ているのだという。
これは食べ物のちまきではなく、笹の葉で作られた厄除けのお守りとのこと。
この収入利益で団体が法人化している例もあるという。
最近では、粽以外にも、手ぬぐい、キーホルダーなども販売していて、これを収集しているコレクターの方も存在しているそうだ。
さすが日本を代表する京都祇園祭と感心した。
宗教的神事ではないねふたがこれをそのまま真似することはできないであろうが、貴重なヒントに成り得ると思う。