第3回 「題材と場面の設定」―何が伝統か―

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今回から、実際の人形ねぷたの作業の手順に沿って話を進めていこうと思う。
まずは、制作に入る前の構想段階の題材と場面の設定について述べよう。
現在の人形ねぷたで作られる題材は、中国や日本の戦国武将が、台数の上では
圧倒的に多い。あとは記紀神話の神々や、龍などの空想上の動物、歌舞伎の
演目などが挙げられる。

ここに挙げたどの題材も、「勇ましさ」を前面に押し出したものといえるだろう。
けれども、江戸時代のころのねぷたの題材にこのようなものはほとんど見られない。
では、なにが題材となっていたのかといえば、えびす様や千両箱、米俵といった、
いわゆる縁起物が多く作られていた。
このねぷたの題材の変化は、明治のころに生じたものであるらしい。

ところで、昨今、先に挙げた題材の例の、どれにも当てはまらない人形ねぷたが
作られているのを知っているだろうか。
それは、歴史上の特定の人物などを題材とはせず、任意の人物、つまり、名前のない
「だれか」を題材としたねぷたである。
このようなねぷたは、弘前でも少数見られるほか、おとなりの五所川原の立ねぷたの
題材にもよく見られる。

私も何度か制作したことがあるけれど、この「だれか」を題材とすることの最大の
利点は、ねぷたに込めるメッセージが歴史的な背景に左右されることなく、きわめて
自由なメッセージ性をもたせることができるという点だ。
例を挙げれば、師弟や親子の絆、自然破壊に対する警鐘、地域活性化などなど、
いずれもこれまでの題材では表現できなかったものばかりだ。
このような題材でねぷたが作られるようになってきたことは、非常に現代的な動向
であるといえよう。

ちなみに、ねぷたの制作を毎年していると、「いつごろからねぷたの題材を考え
るんですか?」とよく聞かれる。
けれども、年がら年中ねぷたのことを考えている私は、いつからそれを考え始めたか
思い出せず、いつも困ってしまうのだ。
次回は、骨組みの作業について述べてゆく。

参考文献 藤田本太郎著作『ねぶたの歴史』

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中川俊一 執筆コラム

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